研究概要 |
1.針葉樹・広葉樹24種についてオゾン分解法を適用し、リグニン中の主要構造であるarylglycerol-β-arylether結合(以下β-O-4結合)の立体異性体比(エリスロ/スレオ比)とリグニン芳香核構造の関係を調べたところ、リグニン中のシリンギル型の芳香核構造が増えるにつれ、エリスロ/スレオ比が増大することが明らかになった。この傾向は、前年度に行ったアテを含む同一樹幹内の分析結果と同じであり、これらにより、同構造の立体構造を規定する上で芳香核構造が重要な役割を果すと結論した。 2.側鎖α位の縮合型構造に由来するオゾン分解性生物である3,4-ジヒドロキシ酪酸を用いて、アルカリ系の蒸解過程でのリグニン縮合反応の進行と脱リグニンの関係について詳細に検討した。種々のスルフィドイオン濃度での蒸解の結果から、縮合型構造は脱リグニン反応の結果として生成するものであり、パルプ残存リグニン中の同構造の量はスルフィドイオンの量に関係なく、同一脱リグニン度では一定であること、そして、この意味において、縮合反応は脱リグニン反応を阻害するものであるとはいえないことを、初めて実証した。 3.その他、酸処理過程でリグニンの側鎖構造に生じる変化を、オゾン分解法によって詳細に明らかにすることに成功した。また、構造上の変化が少ないと言われているMWL (milled wood lignin)は、その調製過程でメカノケミストリー反応による立体優先的な構造変化を受けていること、この変化は、摩砕過程で木粉が受ける機械エネルギーの量と密接に関係していることを明らかにした。
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