研究課題/領域番号 |
13460074
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
新谷 博幸 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (30282693)
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研究分担者 |
羽生 直人 宇都宮大学, 農学部生物生産科学科, 助教授 (10292575)
飯塚 堯介 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (30012074)
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キーワード | オゾン / リグニン / 立体構造 / 木材 / パルプ / アシドリシス |
研究概要 |
1.塩酸および硫酸による酸処理過程でリグニンの側鎖構造に生じる変化をオゾン分解法によって追跡し、酸濃度と側鎖構造の変化の関係、酸のカウンターイオンの影響、アシドリシスによる構造分析の限界などを定量的に明らかにした。 2.リグニンがMWL(milled wood lignin)調製過程で受ける構造上の変化と調製条件の関係について、単離されるMWLのみでなく磨砕木粉自体に含まれるリグニンについてもオゾン分解法により分析し、芳香核部分の変化は顕著ではなく、リグニン構造の変質は側鎖部分にほぼ限定されることを明らかにした。 3.リグニン中の主要構造であるarylglycerol-β-aryl ether結合(以下β-O-4結合)の立体異性体比(エリスロ/スレオ比、E/T比)とリグニン芳香核構造の関係を前年に続き精査した。すでにリグニン中のシリンギル型の芳香核構造が増えるにつれ、E/T比が増大することが確かめられているが、この両者は、芳香核構造比としてニトロベンゼン酸化で得られるS/V比を用いた場合、極めて高い相関係数で関係することが、針葉樹・広葉樹24種について明らかになった。また、同一樹種の異なった組織間でもこの関係が成り立つことが分かった。S/V比の決定機構とE/T比の決定機構が極めて精密に関連していることを示すものであり、リグニン構造の制御機構について、重要な一石を投じる結果である。 4.その他、オゾン分解法を、アルカリ系の蒸解過程でのリグニン縮合反応の進行と脱リグニンの関係、過酸化水素漂白過程におけるリグニン側鎖構造の変化と過酸化水素から生じる活性種との関係、リグニンの酸化処理過程における立体優先的反応の解析、等々に適用し、たの方法では得ることのできなかった重要な知見をリグニン化学にもたらすことに成功した。
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