研究課題/領域番号 |
13460082
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
宮崎 信之 東京大学, 海洋研究所, 教授 (40101464)
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研究分担者 |
乙部 弘隆 東京大学, 海洋研究所, 講師 (10169328)
天野 雅男 東京大学, 海洋研究所, 助手 (50270905)
新井 崇臣 東京大学, 海洋研究所, 助手 (70323631)
田辺 信介 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 教授 (60116952)
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キーワード | 海棲哺乳動物 / 生活史 / 潜水行動 / 有機塩素系化合物 / 有機スズ化合物 / 重金属類 / 環境 |
研究概要 |
本研究に関する業績として、原著論文24編と2著書を発表した。論文の内容としては、海棲哺乳動物の生活史研究と海棲哺乳動物を指標とした海洋汚染研究を実施した。生活史研究の一環として、歯により推定した年齢、オスの睾丸の組織的所見、メスの卵巣所見を総合的に解析して、和歌山県太地で捕獲されたハナゴンドウの群れの組成を解析し、母親と子供を中心とした群れの存在を明らかにした。また、バイカル湖のバイカルアザラシに最先端のデーターロガーやカメラロガーを装着して潜水行動を調査した。その結果、バイカルアザラシは表層から水深200mの間を頻繁に潜水を繰り返しており、昼間と夜間で摂餌行動が異なることを明らかにした。特に、昼間、餌生物であるカジカ類を追跡している行動を写真とロガーの情報からはっきりと示すことができた。この成果は、国際的に高く評価されている。次に、海棲哺乳動物を指標に用いて、有害化学物質(有機塩素系化合物、有機スズ化合物、重金属類など)による海洋汚染の状況を明らかにした。特に、日本の三陸沖に冬季来遊するイシイルカに蓄積している重金属類や有機スズ化合物の蓄積特性について明らかにした。また、バイカル湖に生息しているバイカルアザラシに蓄積しているダイオキシン類の分布特性を示し、その研究成果は国際的に注目されている。バイカルアザラシと同様に、カスピ海に生息しているカスピカイアザラシにも有機塩素系化合物が高濃度に蓄積に蓄積しており、大量死とか内蔵疾患が起きている。これらのアザラシが、約20年前にヒトの世界で広がったA型インフルエンザに感染しており、アザラシの体内にインフルエンザウイルスが長期間保持されていたことが明らかになった。この一連の研究は、ヒト、野生動物(アザラシ)、ウイルスの相互関係の重要性を世界で初めて指摘したものとして、世界の注目を浴びている。
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