研究概要 |
実験魚として、ゴンズイとヒメジ科に属するオジサン、ホウライヒメジ等を用いた。これらの魚での顔面葉から脳幹への投射経路、脊腎・脳幹と顔面葉での線維連絡の有無について、固定脳標本にdioctad ecyl-3,3,3'3'-tetramethyl-indocarbocyanine perchlorate(Dil)法を適用して解析した。その結果、ゴンズイの顔面葉から三叉神経運動核、顔面神経運動核、脳幹網様体への投射が分かった。これらの部位に線維を送るニューロンはゴルジ解析で明らかにした大型のもであることが分かった。特に脳幹網様体に軸索を送るものは顔面葉の4つの触鬚小葉の最も腹側に位置し、その樹状突起は小葉の内部に広く分布していることから、顔面葉内部の多くのニューロンからの収束があると考えられる。脊髄の運動野に色素をいれた場合、脳幹網様体に多数のニューロンが逆行性に標識された。これとほぼ同じ結果がヒメジ科の魚でも得られた。これらの結果より、顔面味覚情報は延髄網様体を経て脊髄連動ニューロンへ送られることが証明された。過去のナマズでの行動実験は、ナマズは味覚入力だけで摂餌行動を誘起できることを証明しており、今回の結果はその神経機構の概要を具体的に示したことになる。 ヒメジ科の魚は下顎に一対の太くて長い触鬚を有し、これを砂泥中に突っ込んで激しく動かして餌を探す。今回の解析で顔面葉から顔面神経運動核近傍への投射が特に明瞭であることが判明した。この運動ニューロンは触鬚の運動制御に関与する4種の筋肉を支配することより、触鬚顔面神経-顔面葉-顔面運動神経核を経る反射経路が明らかになり、触鬚を介する摂餌行動解発の神経機構の概略も解明することができた。 現在、これらの神経機構の詳細をさらに解析するために、生きた魚で目的の脳の部位にhorseradish peroxidaseまたは蛍光標識したdextran amineなどを電気泳動的に与えるて生存させる方法を検討している。
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