1.好塩性乳酸菌Tetragenoccoccus muriaticusのヒスチジン脱炭酸酵素の性状解明:T.muriaticusのヒスチジン脱炭酸酵素を精製し、そのタンパク性状およびN-末端アミノ酸配列を調べた。精製酵素はpH4.5〜7.0の幅広い範囲で高い活性を示し、pH4.5で最も安定であった。熱安定性試験の結果pH4.5で40℃20分間は安定であり、80℃以上では完全に失活した。反応最大速度(Vmax)は16.8μmol histamine/min mg、ミカエリス定数(Km)は0.74mMであった。また本酵素は28.8kDa(α)および13.4kDa(β)の2つのサブユニットから形成され、未変性の状態では258kDaのタンパクであることが示されたことから、(αβ)_6の12量体の構造をとることが推察された。これらの性状は他のグラム陽性細菌のヒスチジン脱炭酸酵素の性状と類似していた。N-末端アミノ酸配列の結果Oenococcus oeniのヒスチジン脱炭酸酵素とαおよびβサブユニットともに完全に一致しLactobacillus buchneriとも非常によく類似していた。 2.塩辛における主要菌群の再検討:Micrococcaceaeに該当する塩辛熟成中の優勢菌群(530株)は、従来法であるOFテストでは457株がMicrococcus、残りの73株がStaphylococcusに分類されるのに対し、SK agarおよびFP agarを用いた群別ではStaphylococcusが491株と圧倒的で、両方法でフローラは大きく異なった。しかしいずれの場合もこれら属レベルでの菌群の挙動と塩辛中での有機酸蓄積の間には明瞭な相関は見られなかった。
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