研究概要 |
(1)好塩性乳酸菌Tetragenococcus muriaticusのヒスチジン脱炭酸酵素遺伝子のクローニング、配列決定および発現:T, muriaticusの染色体DNAのEcoRI断片のうち2.4kbpのものをpUC18にクローニングし、このプラスミドをpE38とした。pE38の挿入配列を配列決定に供した結果2つのオープンリーディングフレームが見いだされ、上流側のものをhdcA,下流側のものをhdcBとした。このうちhdcAはG+C含量がT.muriaticusの染色体DNAより5%高い41%であり、約34kDaのタンパクをコードし、演繹アミノ酸配列はO. oeniのヒスチジン脱炭酸酵素と約98%一致していた。この演繹アミノ酸配列のうちβサブユニットと推定される領域と既知のヒスチジン脱炭酸酵素のβサブユニットにより系統樹を作製した結果、StilesおよびHolzapfel(1997)の報告した16S rDNAの配列による系統樹と異なる結果が得られた。サブクローニング後にhdcAをE. coliで大量発現させた結果得られたタンパクは35kDaのタンパクであり、不溶性の封入体を形成していた。この封入体を可溶化しリフォールディングを行った結果活性のあるタンパクが得られた。ノーザンハイブリダイゼーションにより発現を調べた結果、約1kbの転写産物が低pH半嫌気条件下で培養した定常期の細胞から顕著に見られた。 (2)ふなずしの乳酸菌フローラの解明:ふなずし市販品のフローラはLactobacillus kefir, L. alimentariusが優勢であった。現地(滋賀県)加工場で米飯漬け込み中の各時期の試料について調べた結果、漬け込みの前半にフローラの変動が大きく、好気性菌が淘汰され、乳酸菌が優占した。乳酸菌は漬け込み初期にはL. alimentariusが、後期にはL. kefirが優勢となった。
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