研究概要 |
(1)飛島の魚醤油の熟成中の生菌数は熟成初期の10^6/gから中期には10^8/gに増加した。発酵後期の魚醤油はpH5.5、食塩濃度20.7%、VBN181mg/100g、乳酸1,620mg/100g、グルタミン酸1,322mg/100g、ヒスタミン163mg/100gであった。熟成中の優勢菌群はTetragenococcus halophilusで、初期にはヒスタミン生成能を有するT.muriaticusも検出された。 (2)T.muriaticusのヒスタミン生成条件を検討した結果、対数増殖後期に多量のヒスタミンを生成した。また5-7%のNaCl 1%以上のグルコース、嫌気条件はヒスタミン生成を促進した。T.muriaticusのヒスチジン脱炭酸酵素は2種類のサブユニットから構成され、(αβ)_6の12量体を形成する約268kDaのタンパクであった。各サブユニットのN-末端付近のアミノ酸配列もOenococcus oeniのヒスチジン脱炭酸酵素と高い相同性を示した。pH4.5-7.0の幅広い範囲で高い活性を有し、80℃付近で失活した。 T.muriaticusのヒスチジン脱炭酸酵素遺伝子は947塩基からなり、316残基のアミノ酸をコードしていた。また演繹アミノ酸配列を比較した結果、O.oeniのヒスチジン脱炭酸酵素と98%一致し、16S rDNAを比較した場合と大きく異なる結果が得られた。遺伝子の転写は定常期に嫌気条件で誘導されることが示されたことから酸性条件下で誘導される遺伝子であることが示された。 (3)TSA、BP_5G、ABCM培地上で測定したくさや汁(3試料)の生菌数は1.2×10^8〜1.5×10^9であった。各くさや汁より40菌株を分離しPCR-RFLP法を用いて群分けしたところ、それぞれ6〜9群に分けられた。各群の代表株を16SrDNAの塩基配列より同定した結果はくさや汁より直接抽出、PCR増幅した16SrDNAのDGGE解析の結果(Bacteroides, Flavobacterium, Eggerthelalenta, Clostridium)とは大きく異なることが判明した。 (4)ふなずし市販品のフローラはLactobacillus kefir, L.alimentariusが優勢であった。米飯漬け込み中の各時期の試料について調べた結果、漬け込みの前半にフローラの変動が大きく、初期に優勢であった好気性菌が淘汰され、乳酸菌が優占した。乳酸菌は漬け込み初期にはL.alimentariusが、後期にはL.keifirが優勢となった。
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