研究課題/領域番号 |
13460091
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
平田 孝 京都大学, 農学研究科, 教授 (40273495)
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研究分担者 |
新井 博文 山口大学, 医学部, 助手 (70295848)
福永 健治 関西医科大学, 医学部, 助教授 (30278634)
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キーワード | EPA / トランス異性体 / 酸化安定性 / シス異性体 / 高度不飽和脂肪酸 / アレルギー / 肥満細胞 / LTB4 |
研究概要 |
本研究は、EPAのトランス異性体に着目し、その新規な調製法を開発、分離、精製を行い、酸化安定性などの化学的特性および各種生理学的特性などを明らかにすることが目的である。 本年度は前年度に得られたトランス異性体について、酸化安定性の評価を反応速度論的に解析するとともに、全シス型との比較検討を行った。アルキルラジカル、ヒドロキシルラジカル、一重項酸素等に対する酸化安定性を疎水系、親水系で検討した。その結果、いずれの反応系でもトランス異性体はシス異性体より酸化安定性が高かった。その理由は不明であるが、過剰のラジカル発生剤を用いて反応を開始させた場合でも、酸化連鎖反応速度に違いが認められたことから、トランス異性体はシス異性体より構造的に疎であり、分子内で脂質酸化の連鎖反応が起きにくいためと推察された。リポキシゲナーゼに対してもトランス異性体はシス異性体より安定であった。また、EPAトランス異性体のKmはシス体のそれの約2倍であり、基質-酵素複合体の親和性が低いことが明らかになった。トランス異性体の抗アレルギー効果とその作用機構について調べた。肥満細胞としてSprague-Dawley系ラット腹腔内滲潤細胞(PEC)を用い、高度不飽和脂肪酸トランス異性体の共存下で、カルシウム濃度を上昇させる刺激をカルシウムイオノフォアA23187によって与え、細胞膜リン脂質のアラキドン酸から代謝されて細胞外に放出されるLTB4、ヒスタミン、カルシウムイオン濃度、細胞内酵素活性を測定した。その結果、トランス異性体はヒスタミン放出量等に影響を及ぼさなかった。このことは、トランス化することにより、酸化安定性が高くかつ生理機能も保持した脂質を調製できること示している。今後は生理機能についてさらに検討を重ねる。
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