集落営農が農業・農村の存立に果たす役割に関する地域比較研究

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13460098
• 研究機関: 横浜国立大学
• 研究代表者: 田代 洋一 横浜国立大学, 大学院・国際社会科学研究科, 教授 (00092651)
• 研究分担者: 岡田 知弘 京都大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (60177053) ; 後藤 光蔵 武蔵大学, 経済学部, 教授 (30013030) ; 田畑 保 明治大学, 農学部, 教授 (10308067) ; 磯田 宏 九州大学, 大学院・農学研究院, 助教授 (00193392) ; 村山 元展 高崎経済大学, 地域政策学部, 助教授 (60285070)
• キーワード: 集落営農 / 農村定住条件 / 担い手 / 農事組合法人 / 法人化 / 地域農業 / 構造改革

研究概要

北海道鷹巣町・深川市、青森県相馬村、岩手県花巻市、長野県駒ケ根市、岐阜県平田町、滋賀県高月町等、広島県芸北町、愛媛県吉田町、鹿児島県大口市等で実態調査を実施し、その結果に基づいて研究会を実施し、地域性のみならず、水田農業、畑作農業、果樹作など多様な農業形態に即した集落営農の比較研究を行なうとともに、次年度に向けての取り纏めの方向を検討した。
(1)東日本と西日本、畑作地帯と水田地帯、都市化地帯と中山間地域で集落営農にはきわめて大きな地域的多様性が確認される。
(2)集落規模での取り組みとともに集落を越える大字、旧村レベルでの組織的な取り組みが増えてきた。とくに地域農業の再編単位としての旧村が注目される。
(3)集落営農が定住条件確保を目的としていることに伴い、地域おこしや都市との交流など農業のみならず生活上の多様な自治的取り組みとセットで追求が注目される。
(4)集落営農から法人化への取り組みが強まっている点がとくに強調される。とくに地域農業再編と係わって法人化がめざされ、比較的高齢者による集落ぐるみの取り組みを継続する場合は有限会社から農事組合法人へ、比較的若手による少数者による再編においては有限会社が選択される傾向にある。また鹿児島等では農業外からの参入者が加工資本等にインテグレートされつつ、自ら地域農家をインテグレートしていく再編もみられる。
これらの比較研究を通じて次年度には、「日本農村の主体形成」と「日本農業の主体形成」の二巻の研究書に取り纏めるべく、編別構成の検討を行なった。主体形成については生産力主体の形成、地域づくりの主体形成等が論じられてきたが、今日では地域農業と農村定住条件の維持発展を担う主体としての主体形成が問われている。

研究成果

• [文献書誌] 桂 明宏: "有益費問題と農地管理-果樹農業を事例として-"土地と農業. No.30. 27-49 (2002)
• [文献書誌] 田畑 保: "農業構造の現段階"農業・農協問題研究. 第27号. 1-30 (2002)
• [文献書誌] 田畑 保: "構造改革と農業の持続的発展"農業と経済. 別冊. 64-77 (2002)
• [文献書誌] 田畑 保: "定年帰農と地域農業"農林統計調査. 2月号. 2-3 (2003)
• [文献書誌] 岡田 知弘: "多国籍企業支配のなかの地域経済の選択"ポリティーク. 第6号. 74-93 (2003)
• [文献書誌] 村山 元展: "参加型地域農政の展開-青森県「農業構造政策ローラー作戦」を事例に"地域政策研究. 5巻2号. 85-100 (2002)
• [文献書誌] 磯田 宏: "世紀移行期農政転換における「米政策改革大綱」の位置"農林統計調査. 624号. 12-18 (2003)
• [文献書誌] 田代 洋一: "米政策改革大綱と水田農業"月刊 NOSAI. 55-1. 28-36 (2003)
• [文献書誌] 田代 洋一: "農地制度見直し論と農地耕作者主義"月刊 NOSAI. 55-2. 8-14 (2003)
• [文献書誌] 田代 洋一: "東アジア農業調整をめざして"農政調査時報. No.548. 35-41 (2002)
• [文献書誌] 岡田 知弘: "自立をめざす村-一人ひとりが輝く暮らしへの提案(長野県栄村)"自治体研究社. 150 (2002)
• [文献書誌] 岡田 知弘: "現代自治体再編論"日本評論社. 275 (2002)
• [文献書誌] 田代 洋一: "新版 農業問題入門"大月書店. 300 (2003)
• [文献書誌] 佐藤 了: "持続可能な農業への道-参加型技術革新とその実現条件"農林統計協会. 345 (2003)
• [文献書誌] 桂 明宏: "果樹園流動化論"農林統計協会. 415 (2002)