研究分担者 |
宇野 忠義 弘前大学, 農学生命科学部, 教授 (20271794)
太田原 高昭 北海道大学, 大学院・農学研究科, 教授 (70002061)
甲斐 諭 九州大学, 大学院・農学研究院, 教授 (70038313)
田中 秀樹 広島大学, 大学院・生物圏科学研究科, 教授 (90227166)
中嶋 信 徳島大学, 総合科学部, 教授 (90105320)
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研究概要 |
本年度は,アメリカ合衆国および日本における政策転換と農協の構造的な再編の方向について現地調査研究を実施し,以下の諸点が明らかとなった。 1.米国中西部酪農部門における農協の展開形態として3つが検出される。(1)大規模地域農協が事業の地理的基盤を全米規模に拡大し,一方で集乳と多品目乳製品販売における市場集中度の増大を進め,他方で生産資材供給について巨大農脇間の合併・提携をつうじた競争力強化を進める,(2)一州範囲の中規模農協が食品産業と連携しつつ比較優位を発揮できる特定乳製品の開発と販売に力点をおき,組合員生産者との結合を強めて地位強化を図る,そして(3)有機酪農家を組織することを基盤に有機乳製品というニッチ市場の広域的な開拓と拡大を進め,そのことで小規模家族経営の存立条件を確保しようとする,というのがそれである。 2.米国北西部園芸部門では,次のような構造再編が進行していることが明らかになった。(1)リンゴ部門では,市場価格の低迷が続く中で農協を含めた出荷業者の淘汰・再編が急速に進行し,その中で農協等によるリンゴ園の直営とそこでの品種更新,有機リンゴ販売農協への一部ないし全面転換等による打開が図られている。(2)大都市における「新鮮」「生産者の顔が見える」「有機栽培」といった野菜・果実需要の高まりを背景に,小規模家族経営による都市部ファーマーズマーケット向け野菜・果実生産が一定の広がりを見せ,かつ都市活性化とも結びついた組織化という,新しい協同の形態が構築されつつある。 3.日本ではコメ政策改変や中山間地域政策の展開とも関連した農協事業や農家協同の再編が進んでいる。 以上の全体として農協の革新と再編の方向や形態は多様であるが,それぞれの部門での政策転換の性格,農業・食料システムの再編への対応,組合員との結合強化,および資本調達力の拡充がキーファクターとなっている。
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