研究概要 |
本研究は,土壌中の水分と塩分をモニタリングして,乾燥地の塩集積を防止し持続的な農業を行うための適切な土壌管理法を確立することを目的としている。土壌の種類,塩の種類,地下水位,潅漑水の量と濃度、蒸発強度,植生の種類などにより塩集積やリーチングによる塩分動態は異なる。そこで,土壌のマトリックポテンシャル,土壌の電気伝導度,地温,土壌水分量,イオン濃度などを測定し,数値シミュレーションを用いて塩分動態を予測し,実験結果と比較する。また,海外の乾燥地の圃場レベルにおける塩害地の改良法,節水灌漑法の具体策を考えて,実用的な土壌塩分管理技術の確立を試みることが研究の骨子である。研究の初年度となる平成13年度の研究成果は,(1)塩分動態モニタリングシステムと砂漢化機構解析風洞システムを用いて,最も単純な系として,温度35℃湿度25%一定条件で,蒸発乾燥過程における塩集積実験(NaCl水溶液で5000ppm)を行い,蒸発フラックスを軽減するためのグラベルマルチの実験と比較した。その結果,マルチによる蒸発抑制と土壌表面の塩集積軽減効果を得た。一部の成果は報告したが,目下,モデルの構築とデータ整理を行っている。(2)塩分動態モニタリングシステムを用いて,ハイグレンソルゴを生育させ,NaClとCaCl_2、を同率濃度1500pppmで,3日間断灌漑で異なるリーチング割合で実験を行った。目下,塩分濃度のデータ整理,土壌中のイオン分析中である。(3)室内実験では円筒土壌カラム内の地下水位定条件下で,蒸発実験を行い,陽イオン,陰イオンの鉛直分布の経時変化を測定した。(4)物性値を決定する実験では,誘電率水分計を用いて,内部排水法,蒸発法による不飽和透水係数を決定する実験を行った。(5)水・塩・熱の連成輸送の問題として数値解析も同時に遂行している。6)海外の乾燥地についても,土壌管理法を確立するための指針を提示するために,調査を行っている。
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