研究概要 |
わが国の畑地農業では高収入を得るために,プラスチックフィルムを用い高品質,促成栽培,抑制栽培などで差別化した作物生産が行われている。生産現場ではトンネルマルチ,保温マルチ,昇温抑制マルチ,水封マルチなどプラスチックフィルム素材の光学的特性,熱伝導特性,強度特性を利用した様々な営農が展開している。被覆材の違いによりエネルギーの透過・遮断・反射等,微気象にも変化が生ずる。また,灌漑方法により作物の蒸散,土壌の蒸発条件も異なり,結果として水消費量も異なってくる。咋年度に引き続きプロトタイプ(実態)モデルによる圃場実験の成果と実際の作物を用いた実験(本年度購入のクリプトンハイグロメータを使用)を基に,作物群落内のエネルギー環境を解析するシミュレーションモデルの精度向上を図った。これにより,種々の作物栽培条件での作物蒸散量および土壌面蒸発量の空間分布の定量化を行うとともに各種作物の空間構造モデル化の類型化とそのモデル化および土壌面に到達する短波・長波エネルギー解析を行った。 また,マルチ資材には透明,黒色,白色,銀色等様々あり,これらの光エネルギーの透過特性,反射特性は土壌の温度の上昇,作物体によるエネルギー吸収量の増加等に影響する。本年度購入したマイクロロガーにより土壌水分,土壌温度環境測定精度の向上を図り,マルチ資材の物理性が蒸発散量におよぼす影響を明らかにした。 上記で得られた成果に加え,作物の好水分特性,根群分布特性等の作物要因も考慮し,トンネルマルチ,全面被覆マルチ,局部被覆マルチ等の多様なプラスチックフィルムの設置方法に適した灌漑スケジューリング手法を実験と解析により検討した。これにより,作物の品質向上,生産性向上,灌漑効率向上のための最適な土壌水分環境のための灌漑スケジューリング手法を明らかにした。
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