乾燥・高温環境に適用できる植物成長制御法と新植物の開発に関する研究

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13460113
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 高橋 秀幸 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 教授 (70179513)
• 研究分担者: 藤井 伸治 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 助教授 (70272002) ; 東谷 篤志 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 教授 (40212162)
• キーワード: 乾燥ストレス / 深播き耐性 / 水分屈性 / 突然変異体 / コムギ / シロイヌナズナ / ジベレリン / 雄性不稔

研究概要

乾燥・高温環境における植物の定着に重要な芽ばえの伸長成長および根の姿勢制御、さらに高温ストレスによる生殖障害について、それらの制御と発現にかかわる分子機構を究明するための解析を行った。
コムギ第1節間のGA応答およびねじれ成長の仕組みを解明して深播き耐性機構を明らかにするために、GA超感受性の紅芒ムギと通常コムギ品種のHopeを用いて、GA応答、ねじれ成長の様相、伸長成長とねじれ成長の関係を比較した。その結果、GA超感受性に起因する第1節間の伸長成長とねじれの促進が、紅芒ムギの深播き耐性に関与するものと考えられた。
シロイヌナズナの根の水分屈性突然変異体(root hydrotropism ; rhy)を単離し、それらの特性および突然変異遺伝子を解析した。rhy1は水分屈性を欠損するが、野生型と同様な重力屈性、光屈性、波形成長、伸長成長を示すこと、rhy2とrhy3は水分屈性の低下だけでなく、波形成長あるいは重力屈性、光屈性に異常のある突然変異体であること、rhy4とrhy5が正の水分屈性を欠損することが明らかになった。また、rhy4では、波形成長が抑制されていた。これらの突然変異体の相補性検定およびrhy1突然変異遺伝子のマッピングを行った。
オオムギを用いて、雄性生殖成長における高温障害の実験系を確立し、高温ストレスに最も感受性の高いのは雄蕊分化初期であることを明らかにしてきた。その分子マーカーとなる遺伝子群について発現変動を調べた結果、無処理区では、処理開始直前から1日目にかけて、幾つかのヒストン遺伝子群が顕著に発現上昇したが、高温区ではこれら発現上昇がほとんど起こらなかった。高温区でも2日目までの発生は見かけ正常に発達したことから、これら顕著な遺伝子発現の変化は、高温障害の結果としてではなく原因の一つである可能性が強く示唆された。また、本研究では、高温ストレスによって転写活性の抑制が起こっている可能性も示唆された。

研究成果

• [文献書誌] Y.Saito 他: "Isolation of cucumber CsARF cDNAs and expression of the corresponding mRNAs during gravity-regulated morphogenesis of cucumber seedlings"J.Exp.Bot.. (印刷中). (2004)
• [文献書誌] S.Tsuda 他: "Roots of Pisum sativum L.exhibit hydrotropism in response to a water potential gradient in vermiculite"Ann.Bot.. 92. 767-770 (2003)
• [文献書誌] L.Chen 他: "Spiral growth and cell wall properties of the gibberellin-treated first internodes in the seedlings of a wheat cultivar tolerant to deep-sowing conditions"Physiol.Plant.. 118. 147-155 (2003)
• [文献書誌] M.Kamada 他: "Gravity-induced modification of auxin transport and distribution for peg formation in cucumber seedlings : possible roles for CS-AUX1 and CS-PIN1"Planta. 218. 15-26 (2003)
• [文献書誌] Y.Hatakeda 他: "Gravitropic response plays an important role in the nutational movements of the shoots of Pharbitis nil and Arabidopsis thaliana"Physiol.Plant.. 118. 464-473 (2003)
• [文献書誌] N.Takahashi 他: "Hydrotropism interacts with gravitropism by degrading amyloplasts in seedling roots of Arabidopsis and radish"Plant Physiol.. 132. 805-810 (2003)
• [文献書誌] 高橋秀幸(共著): "学術会議叢書6 なぜなぜ宇宙と生命-宇宙の中の生命と人間-"財団法人日本学術協力財団編/株式会社ビュープロ. 213 (2003)