研究概要 |
脂質代謝系蛋白質の発現を転写レベルで調節するペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(PPAR)-αおよび脂肪酸結合蛋白質(FABP)は体内での脂質利用性を制御する重要な因子と推察されている。本研究では、孵化後のヒナにおける肝臓脂肪酸結合蛋白質(FABP)およびPPAR-α発現量が如何なる因子により調節を受けるのか、さらには蛋白質レベルでの2つのFABP発現量測定系およびニワトリ肝細胞培養系の開発を進めた。 単冠白色レグホーン種の受精卵を孵卵用インキュベーターにて孵卵させた。孵卵開始19日および21日後、孵化直後、孵化8時間および16時間後の計5つの発育ステージで肝臓を採取し、ノーザンハイブリダイゼーションにより二種類のFABP遺伝子及びPPAR-α遺伝子発現量を測定した。また、飼料にPPAR-αの発現を誘導する薬物Wy-14,643を添加しヒナに7日間給与した。ヒナから肝臓を摘出し二種類のFABP遺伝子発現量を測定した。 ニワトリにおける二種類のFABP遺伝子発現量は、孵化を境にして急激に上昇した。また、遺伝子発現の上昇は、L-FABPがLb-FABPに先行することが判明した。いずれの発育ステージにおいてもPPAR-α遺伝子発現量に差は認められなかった。さらに、Wy-14,643によってPPAR-α遺伝子発現を誘導しても、両FABP発現量は大きく変動しなかった。したがって、PPAR-α単独の発現変化でFABP遺伝子発現の変動を説明できるわけではなく、複数の転写因子がその関与していると推察された。さらに、ウェスタンブロッティング法により蛋白質レベルでの2つのFABP発現量測定系を確立するとともに、ニワトリ株化細胞を利用したFABP発現系の開発にも成功した。
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