研究概要 |
1)遺伝的小人症(rdw)ラットの卵胞の血管網には退行像が観察されるが、血管網に退行初期像の認められる卵胞内の卵子を体外に取り出すと成熟・受精し、正常個体に発育した。一方、甲状腺ホルモンにより、退行卵胞の血管網を増殖させることが可能であることを発見し、さらに性腺刺激ホルモンを投与すると排卵が可能になり、受精し、正常個体が得られることを明らかにした。このような甲状腺ホルモン投与ラットの卵巣では、排卵が可能になるのみならず、リクルートされ発育を進める卵胞の数も増加し、閉鎖卵胞数も減少した。一方、rdwラットでは雄の精子形成も不全であるが、甲状腺ホルモン投与により、精子形成が回復し、不妊の雌雄から体外受精・胚移植により、正常個体を得ることに成功した。rdwラットにおいて、甲状腺ホルモン投与により卵巣における血管増殖因子であるVEGF164、VEGF120、TNF-α、bFGFの遺伝子発現が顕著となった。また、VEGF164、VEGF120は胞状卵胞、成熟卵胞で強く発現した。さらにVEGFの受容体遺伝子(FLK-1、FLT-1)の発現を調べ、FLK-1の発現は甲状腺ホルモンで減少することを明らかにした。なおFLT-1の発現は変化しなかった。 2)ブタについても、eCG投与卵巣を用い、卵胞の発育・閉鎖と卵胞膜の血管増殖に明確な相関のあることを明らかにした。また、EGF、VEGF120、VEGF160、bFGFの発現動態を調べ、EGF、VEGF120、VEGF164、bFGFともその発現を確認し、直径4mm以上の卵胞においてeCGにより顕著に増強することを明らかにした。また免疫組織学的に調べ、顆粒膜細胞で発現し、退行卵胞では発現が低下することを明らかにした。さらに、それぞれの受容体(EFGF-R, Klt-1,Flk/KDR, bFGF-R)遺伝子の発現を調べ、eCGによりEFGF-Rを除くこれらのmRNAの発現が増強し、特に直径4mm以上の卵胞において顕著であることを明らかにした。
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