研究概要 |
精細胞の基礎的データの収集を目的として、ヒミズおよびコウモリのステージ表の作成を行い、またレクチン染色性の相違を確認した。同時にシグナル伝達因子であるSmadの精巣における分布を観察した結果、Smad2,Smad3 mRNAは精祖細胞および精母細胞に検出された。次にエストロジェンの精巣における役割を検討するため、生後10週齢の雄ラットにエストロジェンを投与し、1日後に精巣内のテストステロンおよびステロイド合成酵素mRNAレベルを観察した。その結果、テストステロンは著しく減少し、合成酵素も減少した。さらに、生後10日齢のラット精巣より確立したセルトリ細胞培養系に、エストロジェン作用を示す内分泌かく乱物質の1つとされるビスフェノールA(BPA)を10,100,1000pg/mlの濃度で添加し,2,4,6日後に採材、対照群と比較した。その結果、添加後2日では、それぞれ変性したセルトリ細胞が7.2,14.7,20.8%増加していた。同様に添加後4日では、それぞれ11.4,19.5,28.3%,添加後6日では、それぞれ12.6,21.3,34.9%増加していた。これらの増加はいずれも対照群に比べ有意であった。また生後1〜2月齢のシバヤギ精巣より確立したセルトリ細胞初代培養系に、BPAを1,10,100μMの濃度で投与し、1,3,5日後に採材し観察した結果、ラットの場合と同様、濃度依存的、時間依存的に変性セルトリ細胞が増加したことから、BPAがセルトリ細胞に対して直接的な影響を与える可能性が示唆された。続いて胎齢11.5日のマウスの未分化生殖腺器官培養系に、BPAおよび17βエストラジオール(E2)を0.1,1,10μM投与し、5日後に採材、対照群と比較した。その結果、雄では精巣索の正常な形成が確認され、雌においても変化は認められず、BPAおよびE2は未分化生殖腺の初期発生には直接的な影響を与えないことが推測された。
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