研究概要 |
本年度は昨年度までに作出した犬の遺伝子バンクを利用し,これまで同定してきた犬の神経伝達物質関連遺伝子多型と行動特性との関係について解析を試みた。その結果,ドパミンD4受容体遺伝子多型と"飼い主に対する愛着"や"飼い主に対する依存傾向"と,セロトニン1B受容体遺伝子多型と"攻撃性",モノアミン酸化酵素B遺伝子多型と"活動性"など,本研究で同定した多型と一部の行動特性が関連する可能性が見い出された。また,研究代表者が当該研究の成果を2003年8月にオーストラリアで開かれた4^<th> International Veterinary Behavioural Meeting(第4回国際獣医動物行動学会)で報告したところ,3^<rd> International Working Dog Breeding Conference(第3回国際使役犬繁殖会議)の代表者であるDr.Burghardtより正式な招聘を受け2003年10月5-8日に開かれた同会議で講演を行った。同会議では,アメリカ国内を筆頭にオーストラリア,ノルウェー,イギリスなどから100名程度の専門家を迎え,盲導犬や探知犬を含めた使役犬の繁殖プログラム,育成プログラム,行動選抜に関わる情報交換が行われた。その中で申請代表者は本研究の重要性を再認識するとともに,1)使役犬先進国のアメリカであっても統一規格の行動テストがまだ開発されていないこと,2)盲導犬としても探知犬としても使用されるラブラドール種において使役犬として要求される行動表現型が両者で大きく異なること、3)アメリカにおける探知犬のうちラブラドールレトリバー種はオーストラリア税関が保有するコロニーが起源となっており,このコロニーでは行動評価が定期的に行われるとともに欧米において高く評価されていること,など今後の研究進展に役立つ情報を得た。
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