ブタ卵子や顆粒膜細胞には一酸化窒素合成酵素(NOS)の3種のアイソフォームうちNOS-3が発現することがこれまで明らかになったが、NO生成の調節については依然として解明されていない。本研究では、ステロイドホルモンによる調節の関与について検討を行った。ブタ卵巣の小卵胞から採取した卵子-卵丘細胞複合体(COC)をフェノールレッドフリー培地で培養し、NO生成に及ぼす各種ステロイドホルモンあるいはステロイドホルモンフリー卵胞液の効果について調査した。NO生成については培養したCOCから卵子を分離し、1uMのイオノマイシンで刺激することによって行った。NO代謝物は高感度窒素酸化物検出器によって測定した。10nMエストラジオールと培養したCOCから分離した卵子は、イオノマイシンに応答してNOを生成したが、プロゲステロンやテストステロンにはこの効果は認められなかった。NOSの阻害剤はNO生成をブロックした。エストラジオールによる効果は15時間刺激した後に最大反応が認められたが、卵巣から分離直後の卵子はイオノマイシンに応答せず、NO生成は見られなかった。興味あることに、エストラジオールの作用は卵胞液の添加によって阻害された。RT-PCRやWestern Blottingによる解析では、エストラジオール処理による転写活性の増加や翻訳の増加を認めることはできなかった。さらに、卵子にはエストロゲン受容体βが発現していることがRT-PCRによって明らかにされた。これらの知見から、卵子NOS-3は遺伝子発現を伴うことなくエストロゲンによってNO生成が促進されるが、少なくともエストロゲン生成が少ない小卵胞ではNO生成は抑制されていることが示唆された。
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