研究概要 |
[目的]:昨年、児島らによってorphan G-protein coupled receptorの内因性リガンドとして23個のアミノ酸からなる単純ペプチドのニューロメジンU(NMU)が同定された。これまでに、我々は、このホルモンが摂食抑制作用、体温増加、呼吸促進あるいは行動促進作用を有することを報じた(Biochem. Biophys. Res. Commun.276:435,-,2000,277;191-,2000)が、その後の免疫染色の結果、NMUが視交叉上核で多く合成されていることが判明した。視交叉上核は概日リズムの時計中枢であることから、今回、NMUと時計との関係の有無について検討した。 [方法・結果]:ラットを恒常暗下で個別飼育し、赤外線装置でそれぞれの行動の自由継続リズムを記録した。途中で、側脳室にステンレスカニューレを装着した。その後、自由継続リズムが安定したラットを用いて、様々なサーカディアン時間(CT12時を行動開始時刻として)に、NMU1? 3nmol/10μ1側脳室に投与し、その後の自由継続リズムを記録した。その結果、投与時刻依存性にリズムの位相前進(CT6)、位相後退(CT0? 3),あるいは無変化(CT8? 20)が認められた。位相変位の大きさは投与量に依存した。また、NMUの抗体を単一投与すると、すべての投与時間でリズムの周期の不可逆的延長が認められた。 [考察]:NMUが視交叉上核で合成されること、そのレセプターがそこに存在することと、NMUによる今回の位相変位あるいはNMU抗体による周期の延長を併せて考えれば、NMUが時計機構深く関与していると推察される。
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