ウシ卵胞の発育および排卵障害の実態を把握するため、分娩後のウシの卵胞発育および排卵動態について昨年に引き続き調べた。その結果、初回卵胞ウェーブにおいて発育・選択された優勢卵胞が排卵、退行あるいは嚢腫化の三つの経過を辿り、各卵胞発育ウェーブにおける優勢卵胞の運命(排卵、退行あるいは嚢腫化)はウエーブの出現時期と回数および発育動態(速度・期間)に左右されることが明らかになった。また、卵胞ウェーブの動態(卵胞発育・排卵)、発情発現および排卵卵子の発生能(受胎性)についても追跡調査したが、卵胞発育・排卵動態と卵子発生能には直接的な関連のないことが示唆された。しかし、卵胞の運命と血中エストロジェン濃度との関連は認められず、LHおよびFSH濃度、卵胞ウェーブの出現時期ならびに卵胞運命との関連を継続検討している。 マウス卵胞を用いた卵胞体外培養モデルでは、二次卵胞の採取保存法および培養法について検討した結果、直径100-110μmの二次卵胞の効率的な採取法を開発するとともに、採取卵胞はガラス化保存が可能で卵胞膜細胞を除去して10日間体外発育培養すれば、培養卵胞由来卵子が成熟能と受精能を獲得して正常産子へ発生することが確認された。しかし、このサイズの卵胞では卵胞膜細胞の付着した形態での培養が困難であったため、直径150-200μmの二次卵胞を1個ずつ個別に抗酸化剤と性腺刺激ホルモンを添加した培地を用いて5-6日間培養し、さらにLH製剤添加培地で排卵誘起を試みた。その結果、約60%の培養二次卵胞を体外で排卵させることに成功し、排卵卵子も成熟して受精・発生能の有することが確認された。そこで、体外培養における排卵の有無と卵胞の機能(性ステロイドホルモン合成分泌能、関連の酵素発現および性腺刺激ホルモン受容体発現)と、さらに小さな二次卵胞の培養法の開発を続けている。
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