ウシの卵胞発育および排卵障害の実態を把握するため、分娩後の乳用牛における初回排卵と卵胞発育動態の関係ならびに初回排卵後の卵巣周期を継続して調べ、初回排卵の遅い牛では、分娩後の卵胞発育ウェーブが発現しても優勢卵胞が排卵せず、卵胞発育ウェーブを繰り返すことがわかったが、さらに初回卵胞発育ウェーブの発現と分娩前後の血中卵胞刺激ホルモン(FSH)濃度を調べた結果、初回排卵の遅い牛では、分娩後の最初のFSH分泌が遅いために、卵胞発育ウェーブの発現が遅延することを突きとめた。また、超音波誘導経膣採卵技術の改善をはかり、その技術を用いて分娩後早期の卵胞内卵子の受精能を調べた結果、分娩後早期と発情周期が回帰・回復した時期で差異のないことも分かった。したがって、分娩直前・直後のFSHの分泌動態が分娩後の卵胞発育や排卵機構に深く関与していることと、妊娠末期に発育を停止していた卵胞に由来する卵子でも正常な発生能を保有していることが示唆された。 卵胞体外培養法については、主にマウスの卵胞発育・排卵モデルの検討を行った。まず、数種の培養法を比較してインサートを用いた体外培養法が優れていることを突きとめた。そこで、インサートにより培養された前胞状卵胞の発育と機能を調べた結果、培養した前胞状卵胞の80%以上が成熟卵胞まで発育し、人絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)の刺激によって成熟卵胞の約70%を排卵させることができた。さらに、体外卵胞培養により発育・排卵した卵子の80%以上は成熟卵子であり、体外受精によって約75%の卵子が受精・発生し、しかも受精卵子の約65%は正常な胚盤胞へ発育することも確認された。したがって、本研究で開発した方法で体外培養された卵胞は正常な機能を有し、この卵胞体外培養法が卵胞発育および排卵障害機構解析モデルとして利用可能なことが明らかになった。
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