ウシの卵胞発育および排卵障害の実態を把握するとともに、その機構を体外で解析できる卵胞培養法の開発を目的として研究を行った。 まず、分娩後の乳牛の卵胞発育動態を調べた結果、卵胞発育ウェーブは分娩後4〜6日目頃から再開され、約半数のウシでは初回優勢卵胞が排卵せずに卵胞発育ウェーブを繰り返し、初回排卵の後の卵巣周期が短くなることが分かった。また、初回卵胞発育ウェーブの発現と分娩前後の血中卵胞刺激ホルモン(FSH)濃度を調べた結果、初回排卵の遅いウシでは分娩後の最初のFSH分泌が遅いために卵胞発育ウェーブの発現が遅延することが明らかになった。さらに、超音波誘導経膣採卵技術に改良を加えて分娩後早期の卵胞内卵子の受精能を調べた結果、妊娠末期に発育を停止していた卵胞に由来する卵子でも正常な発生能を保有していることも明らかになった。 卵胞培養法については、まず、マウス卵胞をモデルにして検討した結果、メンブラン・インサートを用いた培養法が優れていることを突きとめ、その培養法を用いてガラス化保存した前胞状卵胞に由来するマウス産子を世界で初めて得ることができた。また、インサート内で培養した前胞状卵胞の発育と機能を調べた結果、80%以上が成熟卵胞へ発育し、その約70%は人絨毛性性腺刺激ホルモン処理によって排卵し、かつ排卵卵子の約50%が胚盤胞へ発育することが確認された。さらに、培養卵胞を用いて顆粒層細胞におけるトランスフォーミング増殖因子の発現が卵胞の発育にとって重要な役割を果たしていることも解析することができ、この培養法が卵胞発育や排卵の障害機構の解析モデルとして利用可能なことも実証された。また、ウシの卵胞はコラーゲン溶液に包埋して培養した結果、一次卵胞の発育と初期胞状卵胞由来卵子の成熟が確認された。
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