研究概要 |
(1)アライグマ蛔虫幼虫移行症における免疫学的検討および第三期幼虫に対するレクチン組織化学的検索 これまで,アライグマ蛔虫感染動物では,クマ蛔虫やイヌ蛔虫感染動物に比較して,内臓臓器にほとんど肉芽腫が形成されず,アライグマ蛔虫幼虫移行症では宿主による特異的な反応がすみやかに誘起されにくい可能性を指摘した.この可能性を検証すべく,それぞれの感染マウスについて経時的にIFN-γ,IL-4.IL-5,IL-12について測定を行った.また,この結果をもとに宿主の免疫応答に強く関与すると推察される虫体表面の種間での違いを検索することを目的として,レクチン組織化学を行った.すべての蛔虫感染マウスに共通して,IFN-γは確認されず,IL-4,-5の上昇が確認されたことから,蛔虫幼虫移行症マウスにおいてはTh2細胞による免疫応答が起きていることが確認できたが,アライグマ蛔虫感染マウスでの反応性は極めて弱かった.レクチンによる検索ではアライグマ蛔虫第三期幼虫表面が他に比較してより多くのレクチン抗体に陽性を示した.アライグマ蛔虫にみられる病理学的な事象が免疫学的にも確認され,そのことは虫体表面の糖鎖構造に関連しているかもしれない, (2)血清診断法の開発 昨年度の研究に引き続き,各種幼虫排泄物抗原(LES)を用いたdot-ELISAによる鑑別診断のための抗体検査法を検討した.用いた回虫属抗原はいずれも感染ステージの幼虫から無菌的に作製したLESで,イヌ回虫(Tc),ブタ回虫(As),アライグマ回虫(Bp),クマ回虫(Bt)を同一膜上に吸着させた.これら抗原と,イヌ回虫感染血清を用いて,dot-ELISAの反応条件並びに異種回虫属LES間の交差反応性を検討したところ,イヌ回虫感染血清はBpやBtとほとんど反応しなかった.現在,アライグマ回虫感染血清を用いた検討を進めている.
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