研究課題
基盤研究(B)
地方病性牛白血病(EBL)は牛白血病ウイルス(BLV)感染に起因する。本病はわが国では東北地方において地域的に多発し、BLV感染牛もかなり高率にみられ、その経済的損失も大きい。また第二の側面として、BLVと人の成人T型白血病の原因ウイルスであるHTLVがpX遺伝子を始め全ての遺伝子領域において近似性を有することが判明し、人類の悪性疾患のモデルとして多大の期待が寄せられている。しかしBLV感染から発がんにいたる機序、生体内のリンパ器官の動態など不明な点が多い。BLVに感染した牛のごく一部は、非常に長い潜伏期間を経て白血病となる。感染動物のうち多くは、BLVに感染し抗体陽性となるが、健康であり無症候キャリアーである。病態が進むと、30〜35%の感染動物は持続性リンパ球増多症を呈する。この時期の牛では特殊なB細胞集団、すなわちBoCD5陽性B細胞(B1a細胞)が増殖し、B1a細胞でのBLVプロウイルスの保有率は劇的に増加し、ウイルス遺伝子の発現も増加する。感染動物の1%以下のものは、さらに病態が進行し白血病を発症し(腫瘍形成し)、死に至る。4年間の研究で、ウイルスのtax遺伝子の活性型の違いはヒツジの病原性に影響しないこと、ヒツジにおける主要組織適合抗原(MHC)の違いは感受性や病原性と関連があり、MHCが抵抗性であるヒツジではウイルスに対して強い液性および細胞性免疫が誘導されること、ウイルスに感染したヒツジではリンパ球のアポトーシスの抑制が見られ、リンパ球の増殖が促されること、および持続性リンパ球増多症や腫瘍期の牛では、腫瘍壊死因子受容体II型の発現の亢進が見られた。以上、EBLの発症と抑制に関連する因子の一端が明らかになった。
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