研究課題/領域番号 |
13460140
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大野 耕一 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (90294660)
|
研究分担者 |
長谷川 篤彦 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (90011923)
増田 健一 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (40313077)
辻本 元 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (60163804)
岩田 晃 財団法人日本生物科学研究所, プロジェクトリーダー(研究職) (70193745)
|
キーワード | 遺伝子治療 / 腫瘍 / アデノウイルスベクター / p53 / MDM2 |
研究概要 |
本研究では獣医領域における腫瘍や免疫異常疾患に対する遺伝子治療を開発することを最終目的としており,本年度は、昨年度作製したイヌp53遺伝子発現アデノウイルスベクター(AxCA-cp53)および本年度作製したantisense-mdm2遺伝子を組み込んだアデノウイルスベクター(Ad-m2a)について、イヌの各種腫瘍細胞株に対する増殖抑制効果を中心に研究を行ってきた。 1.AxCA-cp53のin vitroにおける抗腫瘍効果の検討: AxCA-cp53のin vitroでの抗腫瘍効果を、イヌの骨肉腫細胞株(HOS、OOS)および乳腺腫瘍細胞株(cHMp、cIPm、cNMm)を用いて検討した。AxCA-cp53はいずれの腫瘍細胞株に対しても明らかな増殖抑制効果を示したが、この効果は、腫瘍細胞におけるp53遺伝子の変異の有無に関わらず認められ、アデノウイルスの感染効率に依存することが示された。またこのAxCA-cp53による細胞増殖抑制は、G1期での細胞周期の停止およびアポトーシスの誘導によるものであることを証明した。 2.Ad-m2aの作製およびin vitroにおける抗腫瘍効果の検討:イヌmdm2 cDNAの全領域をantisense方向にアデノウイルスベクターに組み込んだAd-m2aを作製した。Ad-m2aをイヌの骨肉腫細胞株(HOS、OOS)および乳腺腫瘍細胞株(cHMp、cIPm、cNMm)に感染させたところ、MDM2タンパクの発現低下およびアポトーシスの誘導を伴う細胞増殖抑制効果が認められた。またAxCA-cp53とAd-m2aの同時感染を行ったところ、単独感染に比較して強い細胞増殖抑制効果が認められ、MDM2タンパクの発現低下およびP53タンパクの発現誘導が確認された。 3.AxCA-cp53の腫瘍症例に対する試験的臨床応用:乳腺腫瘍の1症例(PCR-SSCPではp53遺伝子の変異は認められない症例)にAxCA-cp53(10^<11>PFU/2.5ml)を投与した。投与による副反応は認められず、血中には投与後10分後の時アデノウイルスDNAがPCR法によって検出され、少なくとも3日目までは陽性を示した。また、試験期間中、尿中にはアデノウイルスDNAは検出されなかった。腫瘤は投与3日後にやや縮小したが、7日後には投与時と同程度の大きさとなった。組織においてはウイルスゲノムは投与部位とともに別の腫瘤からも検出されたが、ウイルス由来p53mRNAは、腫瘍組織からは検出されず、付属リンパ節から検出された。
|