研究概要 |
本研究の目的は、ヒトや様々な動物に重篤な下痢を引き起こすロタウイルス感染症の発病機構を、エンテロトキシン活性を持つと言われているロタウイルス非構造蛋白質NSP4に焦点を絞り、分子生物学的に解明すると共に特定した下痢原性分子あるいはNSP4に対するモノクローナル抗体(MAb)を下痢防御へ応用することである。その結果、以下のことが明らかになった。 1.哺乳マウスを用いて、トリロタウイルス感染により下痢を発現する動物モデルを確立した。(Virology 2001) 2.ロタウイルスのマウスに対する下痢発現の有無にかかわらず、いずれの大腸菌発現NSP4も下痢原性を保持していた。その下痢発現部位がアミノ酸109-135位に存在した。(J.Virol.,2002) 3.トリと哺乳類ロタウイルスとのNSP4のアミノ酸相同率は33〜37%であったが、下痢発現部位では50〜59%と高い値を示した。(Virus Res.,2001;2002) 4.下痢発現の有無を分節遺伝子交換ロタウイルスで検討したところ、NSP4とは別にウイルス外殻蛋白質の胃あるいは腸管での抵抗性が病原性に関与していることが明らかになった。(Virology 2003) 5.モノクローナル抗体を作出し、NSP4の抗原性状を調べた結果、NSP4の136-150位のアミノ酸領域は多くのロタウイルスで共通に保存されていることが分かった。(Microbiol.Immunol.,2003) 以上の結果、ロタウイルスの下痢発現機構の一部を解明することが出来た。この成績は、次世代型ロタウイルスワクチンの開発のための重要な基礎情報と言える。
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