研究概要 |
目的の第1は,遺伝子組換え技法により,菌体感染防御抗原や合成ペプチドなど副作用のない画期的なワクチンを開発することである.第2は,診断用抗原の作出やDNAプローブによる新しい遺伝子検出法など早期確定診断法を開発し実用化することである.第3は,本菌の病原性支配遺伝子の解析を行なって,ヒトや動物に感染・発症されるQ熱リケッチアは,どのような遺伝子配列を持つのかを分子レベルで明らかにし,分子設計による弱毒化ワクチンの開発をすることである.公衆衛生および家畜衛生の面から,また,比較医学の立場から国際的に貢献することである. Q熱の新しい動物モデル開発では,SCIDマウスは,C. burnetii感染に極めて感受性が高く,Q熱の新しいモデル動物として有用であることを明らかにした.動物で初めて慢性の心臓病変が認められ,分離株の病原性判定モデルとしての可能性も示唆された.さらに,培養細胞よりも検出感度が高いことから,生物学的定量や分離などにも有用である. C. burnetii抗原および抗体検出ラテックス凝集法(LA)の開発に関する研究では,抗C. burnetii抗体感作ラテックスを用いた抗原検出LAを開発した.量産可能である特異的MAbを用いることにより,ポリクローナル抗体を上回る検出感度が得られた.さらに,NaOH可溶化C. burnetii抗原感作ラテックスを用いた抗体検出LAを開発した.今回開発したLAは,感度および特異性が高く,本小の簡便かつ,迅速な診断に応用できる.病院や検査施設などにおいても利用可能であり,早期診断および発生状況の解明に有用である. C. burnetiiの感染防御抗原の解析に関する研究に先立ち,りぽ多糖体(LPS)O糖鎖,LPS外部コア,外膜蛋白質(OMPs),ペプチドグリカン蛋白質複合体および熱ショック蛋白質60を認識するモノクローナル抗体(MAbs)を38種作出した.また,LPS外部コアの抗原性は株間で異なることが明らかとなり,その相違はプラスミド型と関わる可能性が示唆された.加えてLPS外部コアおよびOMPsは本菌特異的抗原であり,Q熱の血清診断法は使用抗原により特異性が異なると推察された.この成績は病原性解析,診断と疫学的研究などに有用である.
|