研究概要 |
今年度は最終年度として動物モデル開発の継続ならびに日本分離株の分子生物学的解析および総括を行った。 昨年度,開発したQ熱の新しい動物モデルであるSCIDマウスC.burnetii感染モデルによりC.burnetii株間の差異を調べた.その結果,いわゆる慢性株のSCIDマウス感染動態は昨年の急性株における動態とは全く異なっていた。慢性標準株であるPriscilla株感染SCIDマウスでは立毛および腹部膨満が認められたが体重の著しい減少はなく斃死した。最長生存日数は119日間であった。慢性標準株は急性標準株よりも病原性が弱く,症状,生存日数および組織像において株間に相違が認められた。このように、病原体因子もQ熱の病態の多様性に関与していることをはじめて明らかにした。 次いで,日本での分離菌72株を対照に急性および慢性株の型別の指標となるicd遺伝子およびプラスミド非保有慢性株の指標となるcoml遺伝子についてPCR産物制限酵素切断像(PCR-RFLP)解析を行った。icd遺伝子では49株が既報の日本分離株と異なり,海外慢性株と同じ型であった。これら菌株についてPCR産物の塩基配列を解析した結果,既報の海外および日本分離株の塩基配列とは異なっていたが,推定アミノ酸配列はプラスミド非保有慢性株群と一致した。しかし,coml遺伝子の遺伝子型には適合しなかった。日本には海外分離株と異なる性状の菌株が存在することが示唆された。 本研究によりSCIDマウスがQ熱の新しいモデル動物として有用であることを明らかにした。簡易抗体および抗原検出法としてLatex凝集法を開発した.分子生物学的相違の一端が明らかになり,日本におけるQ熱は海外と異なる可能性を示唆した。
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