研究概要 |
昨年までの本研究で植物の抵抗性反応である過敏感細胞死の誘導にOsrbohを介して生成する活性酸素が関与することを明らかにした。そこで、本年度は、活性酸素種の生成機構をより詳細に調べることと過敏感細胞死の実行機構について明らかにすることを目的として研究を行った。 1)Osrbohファミリー遺伝子の単離と活性酸素発生および過敏感細胞死への関与 Osrboh分子がイネのゲノム中にどの程度存在しているかを全ゲノム情報から解析したところ、少なくとも5つの分子が存在することが明らかになった。そこで、RNAiを用いてそれぞれの遺伝子を特異的にノックアウトした形質転換体を作成して解析を行った結果、OsrbohBと名付けた分子が過敏感細胞死誘導を引き起こす活性酸素発生に関与することを初めて明らかにすることが出来た。 2)過敏感細胞死誘導に関与する遺伝子群の単離とその機構 イネの過敏感細胞死誘導に関与する遺伝子群の網羅的解析のため、過敏感細胞死を誘導した細胞としていない細胞から調整したmRNAを用いてサブトラクションライブラリーを作成した。次に、このライブラリーを用いてマイクロアレイ解析を行ったところ、過敏感細胞死誘導のごく初期に植物固有の転写調節因子であるNac遺伝子が発現誘導されることを明らかにした。イネには少なくとも8つのNac遺伝子が存在していたので、すべての遺伝子をクローニングし、これらそれぞれの遺伝子の過敏感細胞死誘導時の発現を調べたところ、NacA,B,Cと名付けた3つの遺伝子のみが過敏感細胞死特異的に誘導されることが明らかとなった。そこで、このA,B,Cと名付けた遺伝子をイネ培養細胞に一過的に発現させたところ、A遺伝子を発現させたイネ培養細胞において過敏感細胞死が速やかに誘導されることが明らかになり、本遺伝子が過敏感細胞死実行のキー遺伝子であることが初めて明らかになった。
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