昨年度は、1)原子間力顕微鏡による高分子・生体構造物観察法のさらなる検討、2)測定法の検討、3)原子間力顕微鏡以外の走査プローブ顕微鏡の生物応用について検討した。本年度は特に以下の点について研究を進めた。 1)原子間力顕微鏡による高分子・生物構造物の液中観察法の確立と具体的応用 ミオシン蛋白等の高分子、染色体等の細胞内構造物などについて液中観察に適した試料調整法を検討した。またQコンロトール法を含めた液中での原子間力顕微鏡の測定法を検討した。このような試料調整法と測定法の検討により、液中での最適な観察条件を調べ、具体的観察を試みた結果、従来のコンタクトモードによる観察にくらべて、より良好な共振モード測定が液中で可能となった。これにより特に染色体について、液中で良好な観察を行うことができた。 2)真空観察法による高分子観察の高精度化 FM検知法を用いた真空中での生体高分子試料の観察法を検討した。これによりプラスシドDNAの低侵襲・高解像度測定を試み、従来のスロープ検出法よりもよりその高分解能の観察ができる可能性がひらけた。 3)光プローブ顕微鏡の可能性の追求 昨年は光プローブ顕微鏡により、生体構造物を表面形状と蛍光像の同時観察法を可能にしたが、さらにその応用を行った。 4)その他の走査プローブ顕微鏡の生物応用の追求 摩擦力・マイクロ粘弾性・吸着力・表面電位などの他の測定法の可能性を検討したが、その生物応用までには至らず、今後の課題として残された。
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