研究概要 |
哺乳類成熟卵は第二減数分裂の中期に停止しており,受精により分裂を再開し,第二極体形成,雌雄前核形成に至る.この卵活性化は卵細胞内Ca^<2+>濃度の反復性の上昇(Ca^<2+>オシレーション)で誘発される.本研究はマウス卵にCa^<2+>オシレーションを誘起する精子の卵活性化蛋白質(Egg Activating Protein;EAP)を同定することを目的とし,以下の結果を得た. 1)精子又は精巣の抽出物を各種クロマトで分離し,各画分を卵に注入してCa^<2+>オシレーション誘起活性を記録し精製を進めた.EAP活性は喪失し,相補性の2成分の存在が示唆された. 2)卵表面蛋白CD9欠損卵では精子一卵融合が起らずCa^<2+>オシレーションが起らない.CD9を強制発現するとこれらの機能が回復することを示した. 3)マウス精子を卵内に注入しても卵活性化が起るが円形精子細胞では起らず,EAPが円形精子細胞から精子に分化する際にEAPが発現することを示した.受精卵では精子由来のEAP活性は,卵細胞質から前核に集積することを示した. 4)精子一卵融合から精子の取込みにはアクチンフィタメントが関与し,その制御には小分子G蛋白質の中のRhoが関与していることをClostridium difficile毒素Bを用いて証明した. 5)イノシトール3リン酸(IP_3)産生酵素の新タイプphospholipase C zeta(PLCζ)がEAPの有力候補であるという報告があり,PLCζと蛍光蛋白質を結合したRNAをマウス卵に注入して発現させるとCa^<2+>オシレーションを誘発すること,前核に集積することを見いだした. 6)バキュロウイルス/Sf9細胞系でPLCζを合皮し,マウス卵に注入してCa^<2+>オシレーションを誘発できた.PLCζの酵素活性は非常に低いCa^<2+>濃度で活性があることを明らかにした.
|