1.オレキシン受容体の突然変異は犬やマウスの覚醒維持障害すなわちナルコレプシー症状を引き起こすことから、オレキシンがREM睡眠に関わっていることが明らかとなってきた。実際オレキシンの脳内投与は覚醒と摂食行動を引き起こす事が知られている。そこで外側視床下部に発現するオレキシン遺伝子発現としてのプレプロオレキシンmRNA量がサーカディアンリズムを示すか否かを、またオレキシン蛋白レベルでリズム性が見られるか否か、調べた。その結果、プレプロオレキシンのmRNA発現にサーカディアンリズムはみられなかった。次に、オレキシン受容体mRNAの発現部位の同定したところ、オレキシン2受容体は視床下部の腹内側核、室傍核、さらに視床内側核に強く発現していることがわかった。しかしながらこれらの遺伝子発現はサーカディアンリズム変動を示さなかった。また、オレキシン蛋白の外側視床下部の発現変動を調べた結果、これもサーカディアン変動を示さなかった。以上の結果、オレキシン神経系は動物が正常状態で睡眠・覚醒や摂食行動を示すことに必須でないことが明らかとなった。2.次にオレキシン神経の活動性を調べた。神経活動依存的にFos蛋白が発現する事が知られているので、オレキシン含有細胞にFos蛋白も共発現するか否かについて調べたところ、共発現する細胞にサーカディアンリズムが見られ、夜間にはこのような細胞数が増大した。以上、オレキシン含有細胞の活動性が、睡眠・覚醒や摂食行動のサーカディアンリズム発現に関与していることが示唆された。3.昼間に餌を提示する給餌制限を施すと、動物の活動、摂食行動リズムは昼型に変化する。このとき、共発現する細胞数のピークも夜型から昼型に変わった。以上、オレキシン神経の活動性にはサーカディアンリズムがあり、これは給餌性リズム形成に深くかかわっていることが明らかとなった。
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