研究概要 |
本年度の研究で明らかにしたことの要点は以下の通りである。 1.グロビンLCRの結合因子Bach1の機能は,試験管内および細胞内においてヘムで制御される。 2.Bach1の生理的標的遣伝子として,ヘム分解の律速酵素であるHeme oxygenase-1(HO-1)を同定した。 3.HO-1のLCRへのBach1の結合も,ヘムにより制御されている。LCRへの結合にはBTBドメインが必須である。 4.Bach1による転写制御には,クロマチンアセチル化・脱アセチル化以外の機構が関与する。 5.Bach2は核内小構造であるPML体に集積し,同部位における転写反応を選択的に抑制する。 6.Bach2のPML体への集積にはBTBドメインが必須である。 以上の結果から,Bach1はヘムで直接活性が制御される転写因子であること,そしてその転写制御能には,今まで言われているクロマチンのアセチル化・脱アセチル化だけではなく,未知の機構も関わっていることが示唆された。一方,Bach2は核内において局所的な転写制御に関わることが示された。これは,核の中で転写反応が構造と密接に関わることを意味するものであり,興味深い。 今後は,Bach1に関しては,抑制共役因子の同定やBTBドメイン結合因子の同定を行うことにより,転写制御反応の生化学的実体を解明する必要がある。Bach2に関してはPML体に位置するであろう標的遺伝子を同定する必要がある。
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