研究概要 |
我々はプロテアーゼの基質認識機構の解明から、多分子集合体の多機能プロテアーゼの20SプロテアソームのC5とC8サブユニットに、分子シャペロンのHsp70に類似するリン酸基転移酵素活性:シャペロン型Nuceloside Diphosphate Kinase (NDPK)活性のあることを世界に先駆け見出した(J. Biol. Chem.,274,34375,1999)。なお我々はHsp70ファミリー蛋白質に、従来からいわれていたATPase活性の他に、リン酸基転移反応としてのNDPK活性のあることを見出しており、シャペロン型NDPKとシャペロン作用との関係についての解析が進んでいる(J. Biol. Chem.,273,5435,1998)。この研究はさらに発展して20Sプロテアソームのシャペロン活性として、基質の熱変性凝集塊の形成阻止作用と、アンフォルダーゼ作用のあることを明らかにした(J. Biol. Chem.,2002,submitted)。以上のこれまでの背景から、多分子集合体としての20Sプロテアソームと26Sプロテアソームを材料として、これまで全く未知の分野として残されていた高次構造を持った蛋白質やペプチドフラグメントの分解機序の解析をシャペロンとの関係から試みた。 今年度の研究において、Hsp70に含まれるNDPKの活性中心を検索し、新たに見い出されたADP結合部位のH227,Glu231,Asp232がNDPKの活性中心の一部を形成していることを明らかにした。このいずれのアミノ酸に変異をいれてもADPの結合力とNDPK活性が失われた。さらに20Sと26Sプロテアソームに熱変性凝集塊のアンフォルダーゼ活性が確認された。また化学変性をさせたCitrate syntaseのリフォールディング活性において、26SプロテアソームにATPの加水分解に依存しないリフォールディング活性が確認できたが、20Sプロテアソームではこの基質対するリフォールディング活性は確認できなかった。
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