研究概要 |
多分子集合体の20Sプロテアソームは多機能プロテアーゼとして知られているが、我々は新たに20Sプロテアソームに分子シャペロン機能を見いだした。分子シャペロンは一般に、基質の結合と解離にATPとADPの交換反応が必要とされているが、20Sプロテアソームのサブユニット群内に、これを裏付けるATP-ADP exchange reactionを担うサブユニットとして、C5とC8サブユニットを同定した。20Sプロテアソームのシャペロン機能として、基質蛋白質の熱変性凝集塊形成に対する濃度依存的な抑制効果が認められるが、化学変性ルシフェラーゼの立体構造を巻きもどすリフォールディング機能は認められなかった。また当初我々が仮定した20Sプロテアソームの蛋白質分解に先立つアンフォールダーゼ機能は検出できなかった。一方シリンダー状の20Sプロテアソームの両端に,プロテアソームの調節サブユニットの19S Capの結合した26Sプロテアソームでは、より広範なシャペロン機能として熱変性凝集塊形成の抑制効果とアンフォールダーゼ機能が認められた。なお19S Cap単独でも、熱変性凝集塊形成抑制効果とリフォールディング機能が認められた。26Sプロテアソームの蛋白質分解機能は、ATP依存性でプロテアーゼの活性中心のある20Sプロテアソームのシリンダー内に基質蛋白質を運び込むために、ATPは必要と考えられてきた。しかし20S,26Sプロテアソーム,19S Capの熱変性凝集塊形成の抑制とリフォールディング機能に、ATPやADPは必要としないことが明らかとなった。しかも熱変性凝集塊形成抑制とリフォールディング機能の発現に、基質蛋白質はリング状、あるいはシリンダー状のプロテアソームの外側に結合して立体構造変換を受けていることが、変性基質を分解するProteinase Kの効果から推定された。このようにプロテアソームのシャペロン機能は、ATPを必要としない熱変性凝集塊形成の抑制とリフォールディング機能、ATPを必要とする基質蛋白質のシリンダー内への輸送機能に分けて考えられた。
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