研究概要 |
神経・筋組織を構成する興奮性細胞においては,神経伝達物質の放出や筋収縮などの生理的反応に先立ち,脱分極による電気的入力が細胞内Ca2+濃度上昇の科学的情報へ変換される。このシグナル変換は細胞表層膜の電位依存性Ca2+チャネルや細胞内Ca2+ストアのCa2+放出チャネルであるリアノジン受容体が主要な役割を担う。細胞内Ca2+ストア膜の機能分子については,生理的状況下での解析が困難で,それらの機能や疾患との関連については不明な点が多い。 本研究においては,リアノジン受容体の構造と機能,リアノジン受容体の生理機能の発揮のために必須な膜構築について解析を計画した。 興奮性細胞での脱分極の電気シグナルからCa2+シグナルへの変換反応では,表層膜上の電位依存症Ca2+チャネルと細胞内ストア膜の放出上Ca2+チャネル(リアノジン受容体)の機能共役による活性化が普遍的に観察され,両分子の機能的共役が極めて重要である。研究代表者のグループでは興奮性細胞の細胞内Ca2+ストアの構造と機能に関する研究を手掛けており,リアノジン受容体とジャンクトフィリン(細胞内表層膜とCa2+ストアの近接構造を形成するタンパク質)の分子生物学的な実験を遂行している。 本研究では,興奮性細胞の細胞内ストアの構造とCa2+放出機構の制御を包括的に理解するために,1.リアノジン受容体のチャネル活性の生理的機能2.ジャンクトフィリンの生理機能3.ストア膜の構成タンパク質の新規同定とその機能に着目した研究を遂行した。 主要な成果としては,リアノジン受容体の中枢系での記憶学習への寄与,ジャンクトフィリン中枢系での記憶学習への寄与,ジャンクトフィリンの中枢系での運動協調性への寄与を明らかにするとともに,ミツグミン53と命名した新規タンパク質の同定したことが特記される。
|