シスチントランスポーターx_c^-系は、細胞内グルタミン酸との交換輸送により、細胞外のシスチンを細胞内へ輸送する。このx_c^-系はxCTと4F2hcという二つのタンパク質から成るが、xCTが輸送担体そのものと考えられている。xCT遺伝子について、組織での発現、転写レベルでの発現調節を明らかにし、さらに、xCT遺伝子をノックアウトしたマウスを作製し、その表現型を解析することによりx_c^-系の個体における生理機能と病態との関連を解明することを目的として研究を行い、以下の成果を得た。 1.xCT遺伝子の脳における発現を調べた。xCTは髄膜に強く発現し、また、最後野など、一部の脳室周囲器官にも顕著な発現が見られ、脳脊髄液におけるシスチン・システイン比、すなわち、レドックス・バランスを調節している可能性が考えられた。 2.シスプラチン耐性を示すヒト卵巣癌細胞を用い、X_c^-系が細胞のグルタチオンを増やすことによりシスプラチン耐性に寄与していることを明らかにした。 3.xCT遺伝子の5'上流部のプロモーター解析を行い、シスチントランスポーターの親電子薬による活性誘導のメカニズムを解析した。親電子薬による誘導には親電子薬応答エレメント(ARE)と転写因子Nrf2が関与していることを明らかにした。 4.xCTの遺伝子5'上流部のプロモーター解析を行い、x_c^-系のシスチン欠乏による活性誘導には2個存在するアミノ酸応答エレメントとして知られている配列と転写因子ATF4が関与していることが明らかになった(論文として投稿準備中)。 5.xCT遺伝子をノックアウトしたマウスの作製に成功した。このマウスは、現時点で3ヶ月まで見かけ上正常に成育しており、繁殖も可能であることがわかった。表現型の解析は今後の課題である。
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