消化管の過誤腫性ポリポーシスと口唇、口囲、口腔内、指趾の特有な色素斑を合併する遺伝性の好発癌性疾患Peutz-Jeghers症候群の原因遺伝子LKB1/STK11の産物が、どのようなシグナル伝達経路で機能しているのかを明らかにすることを目的として研究を進め以下の結果を得た。1)yeast two-hybrid法およびアフィニティー精製-MS法によりLKB1/STK11結合蛋白質を検索し、LMO familyの転写共役因子がLKB1/STK11蛋白質と結合することを見出した。2)LMO familyは転写因子GATAと相互作用し、GATAによる転写を活性化するが、LKB1/STK11はGATAによる転写を活性化する。3)LKB1/STK11がCDKインヒビターp21の転写をp53と協調して活性化する。この系にはLMO family、LMOを相互作用することの知られているアダプター蛋白質Ldb1、GATA6が関与している。4)HeLa、G361細胞にLKB1/STK11を過剰発現するとG1 arrestが誘導される。この時、p21の転写が活性化する。5)さらに、LKB1/STK11によりリン酸化を受ける基質蛋白質の同定を試みたが有力な基質候補はまだ見出されていない。
|