アルツハイマー病の原因ペプチドと考えられるβアミロイド(Aβ)はβアミロイド前駆体蛋白(APP)から限定分解によって生成されるが、これに関わるγセクレターゼ活性の発現には膜蛋白であるプレセニリンとニカストリンが必須であることが判明している。しかし、その活性発現様式には未だ不明な点も多い。そこで本年度はγセクレターゼのin vitroアッセイ法を確立してその活性に影響を与える因子について検討を試み、Aβ生成の調節機構解明への第一段階とした。 培養細胞の膜分画を用いたin vitro反応系を調製し、γセクレターゼによるAPP切断に伴って生じるC末端断片(APP-CTFγ)をウェスタン解析により検出するアッセイ法を確立した。本法によってもプレセニリン・ノックアウトマウスに由来する線維芽細胞ではγセクレターゼ活性は検出されなかった。また、膜分画のCHAPSやCHAPSOによる溶出液中では活性が認められるものの、NP40やTriton-X100による溶出は活性を阻害した。既知のγセクレターゼ阻害剤はこのin vitroアッセイ系においても有効であった。今回用いたプレセニリンやニカストリンの部分ペプチドや特異抗体は活性に有意な影響を与えなかったほか、蛋白リン酸化に影響する各種薬剤にも効果は認められなかった。一方、αおよびβセクレターゼによる切断を受けたAPPのC末端断片APP-CTFαとAPP-CTFβのγセクレターゼによる切断を比較すると、APP-CTFαはAPP-CTFβよりも良い基質となることが示唆された。 本アッセイ法のγセクレターゼ活性評価への特異性と有用性が示された。この活性は界面活性剤に感受性であること、細胞外領域の短いI型膜蛋白をより良い基質とすることなどの知見が確認された。このアッセイ系を用いたγセクレターゼ活性発現機構のさらなる解析を行うとともに、βセクレターゼの解析も合わせAβ生成過程の詳細を明らかにしていく予定である。
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