研究概要 |
1.MALTリンパ腫における接着分子の発現 MALTリンパ腫は長期間にわたり発生局所に局在するという生物学的特性を有するが,このことに接着分子が関わっているだろうという想定のもとに、消化管,眼付属器,甲状腺のMALTリンパ腫におけるα4β7インテグリンL-セレクチンの発現を検索した。消化管の低悪性度MALTリンパ腫では、α4β7インテグリンとL-セレクチンがリンパ腫細胞のホーミングに重要な役割を演じており,高悪性度化に伴ってα4β7インテグリンの発現が失われることが明らかになった。眼付属器ではほとんどの症例がL-セレクチンのみ陽性,甲状腺ではいずれも陰性であった。一方α4β7インテグリンのリガンドであるMAdCAM-1とPNAdのHEV内皮における発現をみたところ,MAdCAM-1は消化管と甲状腺の炎症,MALTリンパ腫で発現していたが、眼附属器、唾液腺では陰性であった。 2.MALTリンパ腫におけるt(11;18)(API2/MALT1)転座のFISH及びRT-PCRによる検索 眼附属器、大腸のMALTリンパ腫では陽性頻度は低いながらもAPI2/MALT1が認められるが,従来の報告と異なりびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫でも少数例陽性のものがみられた。唾液腺や甲状腺のMALTリンパ腫のように、自己免疫が発症に関係していると思われるものでは,陽性例はみられなかった。 3.H.pylori除菌による胃MALTリンパ腫の寛解 H.pylori除菌による胃MALTリンパ腫68例について除菌の効果をみたところ、88%で完全寛解が得られた。なお、API2/MALT1陽性例は全て除菌が無効であった。 4.眼附属器のMALTリンパ腫を含む悪性リンパ腫、反応性リンパ増殖性疾患、境界病変の臨床的、組織学的、並びに免疫遺伝学的特徴を明かにした。 5.多臓器に病変があるMALTリンパ腫の特徴を明らかにした。
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