食道・胃の前癌性病変及び癌におけるSAGEを用いた網羅的トランスクリプトーム解析

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13470045
• 研究機関: 広島大学
• 研究代表者: 安井 弥 広島大学, 医学部, 教授 (40191118)
• 研究分担者: 国安 弘基 広島大学, 医学部, 講師 (00253055) ; 横崎 宏 広島大学, 医学部, 助教授 (10200891)
• キーワード: 胃癌 / 食道癌 / 前癌性病変 / 遺伝子発現 / トランスクリプトーム / SAGE法

研究概要

食道・胃の前癌性病変及び癌における網羅的トランスクリプトーム解析研究の初年度として、胃癌における発現遺伝子プロファイルをserial analysis of gene expression(SAGE)法を用いて解析した。胃の高分化腺癌、低分化腺癌及び非癌部胃粘膜を対象とし、cDNAのpolyA tailに近いCATG((Nla III切断部位)下流に存在する10-12塩基(tag)をそれぞれ約10000tagについてsequenceし、その出現頻度と遺伝子の種類を同定した。複数回出現するtagから、NCBIに登録されている約100種のSAGE libraryにおいて出現のほとんどないものを抽出し、少なくとも3種類のtagを得た。そのひとつはgenerating gene typeIV(RegIV)のtagであり、胃癌で組織型に関係なく極めて高頻度にtagが出現したが、他のSAGE libraryでは、わずかに大腸を含む5つに低い出現頻度で認められたのみであった。RegIVはcalcium-dependent lectin superfamilyに属するが、realtime RT-PCRによる検索では、胃癌及び大腸癌で発現が確認され、特に胃癌ではそのレベルは高く、ステージとの相関も認められた。さらに、それぞれの組織型に特異的発現を示す遺伝子がいくつか同定され、それらの中には、密度依存性の細胞増殖、細胞分裂時の染色体の分配、蛋白分解などに関わる遺伝子が存在していたが、現在までに癌における発現や役割の明らかでないものが多く含まれていた。また、胃癌特異的に発現していた数種のtagは全く未知のものであり、reverse SAGEにより遺伝子の同定を行う予定である。尚、食道癌及び前癌性病変における発現解析は、次年度の課題である。

研究成果

• [文献書誌] Yokozaki, H.: "Genetic and epigenetic changes in stomach cancer"Int. Rev. Cytol.. 204・1. 49-95 (2001)
• [文献書誌] Kitadai, Y.: "Clinicopathological significance of vascular endothelial growth factor(VEGF)-C in human esophageal squamous cell carcinomas"Int. J. Cancer. 93・5. 662-666 (2001)
• [文献書誌] Oue, N.: "Promoter methylation of MGMT is associated with protein loss in gastric carcinomas"Int. J. Cancer. 93・6. 805-809 (2001)
• [文献書誌] Yasui, W.: "Molecular diagnosis of gastric cancer ; present and future"Gastric Cancer. 4・3. 113-121 (2001)
• [文献書誌] Kuniyasu, H.: "Expression of receptors for advanced glycosylation end product(RAGE)is closely associated with invasive and metastatic activity of gastric cancer"J. Pathol.. 196・2. 163-170 (2002)
• [文献書誌] Shigeishi, H.: "Inceased expression of Chk2 in human gastric carcinomas harboring p53 mutations"Int. J. Cancer. (印刷中). (2002)