研究概要 |
食道・胃の前癌性病変及び癌における遺伝子発現解析を通した癌の発生・進展の分子機構の解明を目的として、SAGE法を用いて網羅的トランスクリプトーム解析を行った。まず、胃の高分化腺癌、低分化腺癌及び非癌部胃粘膜を対象とし、複数回出現するtagから、NCBIの約120種のSAGE libraryにおいて出現の殆どないものを抽出し、少なくとも8種類のtagを得た。そのひとつは、generating gene type IV (Reg IV)であり、RT-PCR法による解析の結果、肺癌、乳癌、肝癌、食道癌では発現は殆ど認められず、定量的RT-PCR法において胃癌で高発現が認められ、in situ hybridization法においても進行胃癌の浸潤部に特に強い発現が確認された。また、胃癌の原発巣とリンパ節転移巣において発現の異なる遺伝子をSAGE法により解析し、転移巣において発現が消失あるいは著しく低下していた3つのtag/遺伝子を抽出した。そのひとつは、粗面小胞体とゴルジ装置間の小胞輸送に関与するCOP I複合体の1サブユニットであるγCOPであった。γCOPの発現は、正常のリンパ節や脾臓においても認められたため、laser capture microdissection後に原発巣と転移巣での発現をRT-PCR法で比較すると、明らかに転移巣において発現は減弱していた。これら遺伝子の食道癌および前癌性病変における発現解析はISHによって進め、また、SAGE解析のために試料を収集中である。一方、び漫浸潤型のスキルス胃癌で特異的に高発現を示し、SAGE databaseにおいてマッチする遺伝子が同定されないtag (SES1,SES3,SES4)を見い出した。新規の胃癌特異的浸潤関連遺伝子である可能性があり、reverse SAGE法および5'RACE法によりクローニングを行っている。
|