研究概要 |
スカベンジャー受容体は、従来、粥状硬化におけるマクロファージや平滑筋細胞の泡沫細胞化に深く関与する受容体として注目されてきたが、このスカベンジャー受容体ファミリーに属する新たな受容体が発見されるに連れて、それぞれの受容体は、粥状硬化のみならず、生体内における種々の生理機能や病的反応に深く関与することが明らかになってきた。 私どもは、クラスAに属するSR-AI, II(CD204)に対する特異性の高いモノクローナル抗体を作製し、ヒト組織におけるSR-AI, IIの分布を検討した。その結果、SR-AI, II(CD204)は正常状態で全身に分布する大多数のマクロファージに既に発現が認められ、種々の炎症性疾患では、浸潤マクロファージや肉芽腫性疾患における類上皮細胞や多核巨細胞に強い陽性所見が得られた。これらの結果から、SR-AI, IIはマクロファージにおける外来異物認識に重要な役割を果たすものと考えられる。また、アルツハイマー病の老人斑におけるミクログリアにも陽性所見が得られ、粥状硬化病巣のマクロファージや糖尿性腎症における糸球体マクロファージにおけるAGE(advanced glycation end product)などの内因性の老廃物の取り込みにも関与するものと考えられる。粥状硬化の検討では、SR-AI, IIは脂肪線状におけるマクロファージとともに、粥腫周囲のマクロファージに陽性で、他方、クラスBに属するCD36は、進行した粥状硬化病巣の粥腫中心部に陽性となり、SR-AI, IIとは異なる分布を示した。この二種の受容体は粥腫の進行度の応じて、果たす役割が異なるものと思われる。 現在、クラスAに属するMARCO受容体ならびにクラスEに属するLOX-1の発現と分布の検討に力を入れており、それぞれ脂質代謝に重要な役割を担うことがわかってきた。
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