研究概要 |
臓器の炎症におけるCD1dの役割を肝臓と肺を対象に動物実験と人体症例の解析を多面的に行った。 肝炎の重症化や劇症肝炎はウィルス、薬剤、原因不明のものがあり、致死率が高く、発症前の診断と適切な制御法の開発が急務である。病因により肝細胞傷害機序の違いが示唆されている。私たちは、動物実験から、MKT細胞は肝臓類洞内に多く存在し、肝炎の重症化に重要な指標となるとともに直接的な役割を果たすことを見いだした。1)肝炎自然発症ラットを通常飼料で飼育すると、急性肝炎発症ラットのうち約80%が黄疽を認めた後、数日以内に重症化し、hyperacute liver failureにて死亡する。この際劇症化個体は早期(黄疸発症後3日〜7日以内)に肉眼的黄疽・消耗が顕著で、具体的指標として血清ビリルビン値が3mg/dl以上のものを重症化(劇症化)として確定できた。2)組織学的観察により、肝炎発症前にはほぼ正常で、急性肝炎発症後には肝細胞の大型化と核の腫大、クッパー細胞の増加、肝細胞の単細胞壊死がみられた。劇症化時には亜広範性壊死、クッパー細胞の増加、類洞内リンパ球の浸潤の増加が見られた。肝炎発症と重症化の違いは壊死の程度・範囲とリンパ球浸潤であった。以上より、急性肝炎の発症は細胞傷害性因子(重金属:銅、フリーラジカルなど)が重要であり、劇症化にはリンパ球を含めた免疫系の関与が示唆された。3)TNFalphaとIFNgammaが重症化時にわずかに上昇する。さらに、4)ヒトの先天性銅代謝異常疾患であるウィルソン病の同胞例(2名)で、同一の変異遺伝子を両方のアリルに保有する未発症例を経過観察した。両者とも肝臓への銅蓄積は同程度で組織学的にもまったく差がないにもかかわらず、肝障害を発症した者では末梢血中NKT細胞のsemi-invariant TCR鎖を保有するものが著増していた。さらに多くの症例の解析を行い、劇症化時の知見を蓄積している。 肺の炎症・アレルギー疾患として、キノコ工場就労者に発症するヒトの職業性喘息症例について、免疫学的なマーカー(末梢血リンパ球分画、サイトカイン、IgE、沈降抗体、症状の程度)を指標に詳細に解析し、フォローアップスタディを行い、就労(胞子暴露)早期からのCD1b,陽性単球の増加と引き続く軽度のTh2偏倚状態を明らかにした。
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