研究概要 |
本研究は、リーシュマニアのLaMDR1とLaMDR2という2つの異なるトランスポーター型ABC蛋白質の構造と機能,とくに細胞内局在と薬剤耐性における役割を明らかにすることを目的として計画された。今年度は、LaMDR2蛋白質のC末端のアミノ酸に対する抗ペプチド抗体をさらにペプチドカラムで精製し,野生型とLaMDR2過剰発現株に対する精製抗LaMDR2抗体の反応性について,間接蛍光抗体法(IFA)により解析を行った。その結果,野生型原虫におけるLaMDR2の発現はIFAでは検出できないことが再確認された。LaMDR2過剰発現株に対しては、リーシュマニア膜抗原(gp63),グリコソーム局在蛋白(HGPRT),細胞質局在蛋白(p36),およびアルファチューブリンのそれぞれに対する抗体を対照として観察した。その結果,抗LaMDR2抗体は原虫の細胞表面膜とはほとんど反応せず,細胞質内の不特定構造,とくに体後端部と反応することが観察され,対照抗体のいずれとも異なる挙動を示した。また,蛍光の強さは対数増殖期の原虫において著しく,蛍光局在は細胞によって大きく異なっていた。これらの結果は,GFP-LaMDR2キメラ蛋白質発現原虫株におけるGFPの蛍光動態とよく一致することから,LaMDR2蛋白質は細胞内において構造変化の盛んなオルガネラ.たとえばリソソームのような構造に発現している可能性が強く示唆された。
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