研究概要 |
リーシュマニアの薬剤耐性機構に関するこれまでの研究で,Leishmania amazonensisからLaMDR1とLaMDR2の2つのトランスポーター型ABC蛋白質遺伝子を単離した。LaMDR1はヒトの薬剤耐性遺伝子であるMDR1の相同遺伝子であり,LaMDR2は新規のMDR型遺伝子であって抗癌剤の5-fluorouracilの排出に関与することを見出した。本研究は,LaMDR2が細胞表面膜に局在して薬剤排出ポンプとして機能しているのか,あるいは細胞内小器官膜に局在して薬剤を隔離しているのかを検証することを目的として計画された。抗LaMDR2ペプチド抗体を用いたウエスタンブロット解析により,LaMDR2遺伝子の過剰発現株ではLaMDR2が対数増殖期の原虫においてより多く産生されていることがわかった。野生株における発現はRT-PCR法で確認できた。間接蛍光抗体法解析では,抗体は原虫の細胞表面膜とは反応せず,細胞質内の不特定構造と反応した。Green fluorescent protein(GFP)とLaMDR2のキメラ蛋白質を発現させた原虫株を生きた状態で共焦点レーザー顕微鏡観察を行ったところ,GFPの蛍光はやはり対数増殖期の細胞で強く,定常期の細胞では微弱であった。GFP蛍光は球状,袋状,棍棒状,管状などの構造として観察され,蛍光局在は細胞ごとで異なっていた。その分布はリソソームの蛍光マーカーの分布とおおむね重なったが,ミトコンドリアの蛍光マーカーとの重なりは少なかった。リーシュマニアにおいては管状構造をとるリソソームが観察されていることから,LaMDR2トランスポーターはリソソームにターゲットされて発現し,リソソームーエキソサイトーシスのシステムと関連して薬剤排出ポンプとして機能している可能性が示唆された。
|