研究概要 |
腸管寄生虫感染における吸収上皮細胞のグルコーストランスポートの変化及びアポトーシスの発現機構を明らかにするために,下記の研究を実施した. 1.N.brasiliensis感染ラット小腸におけるグルコーストランスポーターの変化. 感染ラット小腸単離上皮細胞のsemi-quantitative RT-PCRによる解析で,感染7,14日後にGLUT-5の有意の低下,GLUT-1の有意の上昇を認めた.このことから,線虫感染局所の小腸においては,グルコーストランスポータの発現パターンが著しく変化していることが示唆された. 2.N.brasiliensis感染ラット小腸におけるアポトーシス発現機構 感染ラット小腸上皮細胞においては,アポトーシス実行酵素のcaspase-3活性が有意に上昇していることが明らかになった.さらにRT-PCR法によるFasL, Fas, TNF, TNFR, Bax, Bak, Bcl-2, granzyme B, perfolin等の発現解析の結果,granzyme B及びperfolin発現がcaspase-3活性とよく相関して上昇することが明らかとなり,上皮内及び粘膜固有層内リンパ球の上皮細胞アポトーシス発現への関与が示唆された. 3.腸管寄生虫感染者におけるグルコーストランスポーター解析の基礎検討 タイ王国ノンカイ病院消化器内科医S.Lertanekawattana博士との共同で,消化器症状を有し来院した35名からinformed consentを得た後に十二指腸生検を実施し,日本へ運搬しRT-PCR法でグルコーストランスポーターの発現解析を行った.その結果,GLUT-1発現がヘモグロビンレベルに逆相関して上昇することが明らかとなった.しかし上記検体中には寄生虫感染者が4名しか含まれておらず,腸管寄生虫症における変化を明らかにすることができなかった.
|