研究概要 |
腸管寄生虫感染における吸収上皮細胞のグルコーストランスポートの変化及びアポトーシスの発現機構を明らかにするために,本年度は下記の研究を実施した. 1.N. brasiliensis感染ラット小腸におけるグルコーストランスポーターの変化. 前年度,感染ラット小腸上皮細胞においては感染7,14日後にGLUT-5遺伝子発現の有意の低下,GLUT-1遺伝子の有意の発現上昇を認めることを報告した.今年度は,免疫組織化学でその結果を追認した.さらに同時期に細胞内lactateが上昇し血中蛋白およびグルコースレベルが低下していることが明らかになり,グルコーストランスポーターの変化が栄養吸収に重要な役割を果たしていることが示唆された. 2.N. brasiliensis抗原によるアポトーシス発現機構 N. brasiliensis抗原が小腸上皮由来細胞株IEC-6の増殖に及ぼす影響を検討した.その結果,寄生虫抗原はIEC-6の細胞脱落とカスパーゼ3の活性化,PARPの分解を誘導し,アポトーシス発現を促進することが明らかになった. 3.腸管寄生虫感染者におけるグルコーストランスポーターとサイトカイン発現の検討 昨年度に引続きタイ王国消化器内科医S. Lertanekawattana博士との共同で,消化器症状を有する患者からinformed consentを得た後に採取した十二指腸生検材料についてRT-PCR法でグルコーストランスポーターの発現解析を行った.その結果,腸管寄生虫感染者ではGLUT-5発現に変化は見られなかったが,H. pylori感染者ではGLUT-5発現の低下を示すことが明らかになった.さらにサイトカイン発現の解析ではIL-5発現が腸管寄生虫感染者で上昇していることが明らかになった.寄生虫感染者におけるGLUT-5発現はさらに例数を増やして検討する必要性が考えられた.
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