研究概要 |
1,464アミノ酸からなる一本鎖のタンパクである百日咳菌壊死毒は、アミノ基末端側に標的細胞に結合する領域を有し、カルボキシル基末端側に作用本体であるトランスグルタミナーゼ活性を有する。本研究において、われわれは壊死毒の41-44アミノ酸位で、動物細胞に豊富なエンドプロテアーゼのfurinによる切断を受けることを見出した。この切断は壊死毒の細胞に対する活性にとって必須であり、またfurinの前処理によりペプチド結合に切れ目の入った壊死毒はintactな壊死毒に比べて細胞に対する活性が著しく高いことがわかった。furinモチーフからC末端側の壊死毒断片(delta B)は人工脂質二重膜と会合し、さらに全長壊死毒に非感受性の細胞に作用することがわかった。以上のことから、壊死毒は標的細胞上の受容体と結合した後、1)furinのようなプロテアーゼによって切断を受け、2)受容体結合部位を除く断片(delta B)が自働的かつ非特異的に細胞膜と相互作用して活性断片を細胞質内に転位させると考えられた。 DNT受容体遺伝子の一過性発現クローニングのためのスクリーニング条件を検討した。DNTが標的細胞のRhoタンパクを活性化することを利用して、Rhoによって活性化する転写因子serum response factorの認識配列を含むプロモーター/エンハンサー領域にルシフェラーゼあるいは緑色蛍光タンパク質の遺伝子を連結したレポータープラスミドを作製して種々の培養細胞株に導入し、Rhoの活性化状態によるレポーター遺伝子発現の変化とDNTに対する反応性を検討した。その結果、Rhoの優性活性型変異体の強制発現やDNTの培養液への添加によって、レポーター遺伝子の発現が優位に増大することがわかった。今後、同様のレポーターシステムを用いてDNT受容体の一過性発現クローニングを試みる予定である。
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