プリオン蛋白(PrP)欠損マウス(Ngsk-Prnp^<0/0>)に惹起される小脳Purkinje細胞変性におけるプリオン類似蛋白PrPLP/Dplの役割を明らかにするため、PrP^cの機能は消失しているがPrPLP/Dplを発現しない別系統のマウスZrchI-Prnp^<0/0>の遺伝的背景に、神経細胞またはPurkinje細胞特異的にPrPLP/Dplを発現するトランスジェニックマウスTg(PrPLP/DDl)Zrch-Prnp^<0/0>を作製した。その結果、全てのTg(PrPLP/Dpl)Zrch-Prnp^<0/0>マウスは小脳失調を来しPurkinje細胞変性死を呈した。また、これに遅れて、Tg(PrPLP/Dpl)Zrch-Prnp^<+/+>マウスの一部でもPurkinje細胞変性死が認められた。しかし、Tg(PrPLP/Dpl)Zrch-PrnP^<0/+>マウスではPurkinje細胞変性死は認められなかった。つまり、これらの結果は、Ngsk-Prnp^<0/0>マウスに認められたPurkinje細胞変性死が細胞それ自身におけるPrPLP/Dplの過剰発現によって起こり、またPrP^cが発現量依存的にPrPLP/Dplの神経細胞変性作用を阻害することを意味している。次に、PrPLP/Dplの神経毒性とそれに拮抗するPrP^cの防御作用の分子機構解明のために、いくつかのキメラあるいは変異型PrP遺伝子トランスジーンをNgsk-Prnp^<0/0>に再導入した。そのうちN末66アミノ酸(residues 23-88)を欠く欠失変異型PrPはNgsk-PrnP^<0/0>の神経変性を防御することができなかった。従来PrP^cはCu^<++>細胞内取り込みや代謝に関与するとの説があったが、この領域はCu^<+/+>結合部位とされるOcta-repeat領域に相当する。PrP^cの神経変性防御作用にはCu^<+/+>か関与することが示唆された。
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